審査報告書まとめ

外資系製薬会社社員による厚生労働省が医薬品を承認する際に作成する審査報告書の解説

アビガン錠200mg

所感

  • 良く承認されたなこの薬という印象。。。むしろ新型インフルよりコロナへの効果の方が期待できるかも。。。

審査まとめ

  • アビガンは臨床試験での基準を満たしていないが新型インフルエンザ向けに政治的に承認された。
  • アビガンは他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分な新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症に対して使用される。
  • 臨床試験では季節性のインフルエンザウイルスに対して効果が確認されていない。
  • これまでの抗インフルエンザ薬と違う作用を示すことから未知のインフルエンザウイルスに対して有効性が認められる可能性がある。
  • 評価された臨床試験の数は16試験
  • 妊婦に対してリスク有
  • 動物に対する試験では鳥インフルエンザなどの新型インフルエンザに効果が認められている。

製品概要

申請した平成23年3月30日時点では申請者側からはA 型又は B 型インフルエンザウイルス感染症としての効能又は効果が提案された。

[販 売 名] アビガン錠 200mg
[一 般 名] ファビピラビル
[申 請 者 名] 富山化学工業株式会社
[申請年月日] 平成 23 年 3 月 30 日
[剤形・含量] 1 錠中にファビピラビルとして 200mg を含有するフィルムコーティング錠
[申請時効能・効果] A 型又は B 型インフルエンザウイルス感染症
[申請時用法・用量] 通常、成人にはファビピラビルとして 1 日目初回は 1200mg、1 日目 2 回目は 400mg、2 日目から 5 日目は 1 回 400mg を 1 日 2 回経口投与する。

主な臨床成績

アビガンとタミフルのA型又はB型インフルエンザウイルスへの効果を比較した結果タミフルより効果が弱かった。

〈参考:国際共同第Ⅲ相試験(成人)〉
A型又はB型インフルエンザウイルス感染症患者を対象として、オセルタミビルリン酸塩( 1 回75mg 1 日 2 回、 5日間)を対照とした国際共同第Ⅲ相試験(成人、承認用法及び用量とは異なる用法及び用量注19))を実施した[640例(日本467例、韓国55例、台湾118例)]。インフルエンザ主要症状罹病期間注20)の中央値[95%信頼区間]は、本剤群(377例)で63.1[55.5, 70.4]時間、オセルタミビルリン酸塩群(380例)で51.2[45.9, 57.6]時間であり、オセルタミビルリン酸塩群に対する本剤群のハザード比[95%信頼区間]は、0.818[0.707, 0.948]であり、本剤の有効性は示されなかった(p=0.007、log-rank test)。

審査の論点

主たる臨床試験における解析対象について

会社としてはPPSでの解析対象が妥当として申請を行った。機構側はFASを解析対象とすることが妥当と考えた。結果FASで解析をした場合はアビガンはタミフルに対する非劣勢を示せず。タミフルよりも効果は弱かった。

機構は、第Ⅲ相国際共同試験(312 試験)における有効性解析対象集団は PPS と規定されていたが、ITT の原則に基づき FAS と設定することがより適切であったと判断した。また、症例検討会において「対象外疾患」とみなされ、解析対象から除外された症例が組み入れ被験者の 9.7%(74/762 例)であり、除外された症例の詳細を確認したところ、RT-PCR 陰性例が 43 例、合併症例(疑いを含む)が 30 例、RT-PCR 陰性かつ合併症例が 1 例であった。RT-PCR 陰性例(44 例)について、本試験では日常診療と同様にインフルエンザキットにより陽性と診断された症例がランダム化されており、RT-PCR 陰性例を有効性解析対象集団からは除外すべきではなく、当該症例を含めた解析対象における解析結果を基に、本剤の有効性を評価することが適切と判断した。また、合併症例(疑いを含む)については、個々の症例の採否により解析対象集団を構成することは不適切であり、RT-PCR 陰性例以外の「対象外疾患」として除外された 31 症例は、治療の結果に依存するようなランダム化以後の主観的な判断に基づき除外の採否が決定されており、ITT の原則にしたがい、有効性解析対象集団からは除外すべきではないと考え、当該症例を含む解析対象における解析結果を基に、本剤の有効性を評価することが適切と判断した。

催奇形性のリスクについて

下記の理由により妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には使用できない。

ヒトで妊娠検査が陰性を示す妊娠初期における本薬の投与により受精卵の発育遅延又は致死が引き起こされる可能性が示唆されており、また、胚・胎児試験を実施した全ての動物種(4 種)で本薬の催奇形性が認められていること、さらに動物で催奇形性が認められた曝露量と申請用法・用量でのヒトでの曝露量が同程度であることを踏まえると[3.(iii)毒性試験成績の概要<審査の概略>(1)胚・胎児への影響についての項、参照]、ヒトにおいても催奇形性作用が強く懸念される。

 

出典

添付文書リンク

審査報告書リンク